ネジじゃない!? ピアノを支える“摩擦のチカラ”

こんにちは、平瀬楽器のヒラセトモキです。
今日は、ピアノの中で音を支える「チューニングピン」について、
意外と知られていない仕組みをお話しします。
ピアノの“銀色の棒”、実はネジじゃない
ピアノの中をのぞくと、銀色の棒がずらっと並んでいます。
調律師が「棒を回して音を合わせている」姿を見ると、
「ネジを回してるのかな?」と思われる方も多いのですが……
実はあれ、ネジではありません。
チューニングピンと呼ばれるその棒は、
カシやケヤキなどのとても硬い木(ピンブロック)に
無理やり打ち込まれているだけなんです。
音を支えるのは“摩擦”の力
ピアノの弦は1本あたり約80〜90kgの力で引っ張られています。
それを支えているのが、ネジ山ではなく木とピンの摩擦。
つまり、ピアノは木と鉄の絶妙なバランスで成り立っているのです。
弦が200本以上もあるピアノ。
1本の弦のテンションが変わると、
他の弦にも影響が出て音が狂うのはそのためです。
季節でピッチが変わる理由
ピアノが季節で音程を変えるのも、この摩擦構造が理由の一つ。
木は湿度や温度で伸び縮みします。
湿度が上がると木が膨張してピンが締まり、
乾燥すると緩んでしまう。
だからこそ、定期的な調律が欠かせないんです。
調律師は“ピンの気持ち”を感じている
調律師が使う道具は「チューニングハンマー」。
ハンマーといっても叩くわけではなく、
ピンに刺して微妙にねじるための道具です。
このとき、調律師はピンの“抵抗感”を手で感じ取りながら、
ほんのわずか(ミクロン単位)に角度を動かして音を整えます。
言葉にすれば単純ですが、
ピンが「そこにいたい場所」を感じながら
音を安定させるには、熟練の感覚が必要なんです。
自分で調律してみたい方へ
最近では、ネット通販で調律道具が手に入る時代。
「自分でもやってみようかな」という方もいますが、
ピアノのピンはギターのペグのように簡単には回りません。
力任せに動かすとすぐに狂ったり、
最悪の場合は弦が切れることもあります。
ピアノの調律は“摩擦を感じる作業”。
こればかりは経験と感覚がものを言います。
木と鉄のバランスが生む“音の芸術”
ピアノは、ネジでもなくボルトでもなく、
木と鉄が支え合って成り立つ摩擦の楽器。
一本一本のピンが絶妙な力加減で支えあうことで、
あの繊細で豊かな響きが生まれています。
まとめ
-
チューニングピンはネジではなく“摩擦”で固定されている
-
季節や湿度でピッチが変わるのは木が動くため
-
調律師は“ピンの抵抗感”を感じながら音を整えている
ピアノの中には、そんな見えない工夫と職人技が詰まっています。
これをきっかけに、あなたのピアノの中身にも
少しだけ興味を持ってもらえたら嬉しいです。
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