どうして楽器店をやっているの?大切にしたい思い
はじめの一歩を応援する音楽サービス専門店 平瀬楽器のヒラセトモキです。
おはようございます!
今日は所用で金沢へ出張で、電車の中でこの記事を書いています。
いつもと違ってちょっと時間があるので、これまでには書いていないことを書いてみたいと思います。
なんで楽器店をやっているの?なんで音楽教室をやっているの?
今となってはご存知の方はもう数少ないかもしれませんが、うちのお店、実はもともとメガネと時計と宝石のお店だったんです。
先々代、つまりぼくのおじいちゃんの代にヤマハ音楽教室を始めることになり、おばあちゃん、つまり先々代社長の奥さんが中心となっていろんな展開をしたそうです。
当時は地域の公民館をお借りして音楽教室をしていたそうです。
毎週のレッスン前に会場に行き、掃除をし、オルガンを並べ、レッスンが終わるのを待って片付けをして帰るという生活を繰り返していたそうです。
今でこそたくさんのレッスン室があるセンター教室を構え、毎日朝から晩までレッスンを行っていますが、一番最初ってこんな苦労を重ねて子どもたちに音楽教育の場を作ってくれていたんですね。
その歴史があるからこそ、今この地域でこの仕事をさせていただいているんだなということに感謝しています。
障がいを持った子どもたち
ある先生の生徒さんの保護者さんから相談がありました。
「下の子に障がいがあるんだけど、レッスンしてもらえますか?」
その子はいわゆるダウン症で、言葉もほとんど出ず、快活さもなく、初めてレッスンに連れてこられた時にはどう贔屓目に見ても音楽をする、ましてやピアノを弾いたり歌を歌ったりすることは無理だろうなと思いました。
しかし、先生と保護者の方が粘り強く関わり、レッスンを重ねていったことで、数年後には普通に会話を交わすことができるくらいに成長しました。
さすがにピアノを弾くということはまだまだ難しいのですが、ふと気がついた時には1人で歩き、歌い、返事もできる、そんなお子さんに育っていました。
ご家族の努力もありますし、日頃通っている学校での関わりもあると思いますので、すべてが音楽のおかげだとは思えません。でも、音楽にもきっとこうなったキッカケ=パワーがあるはずだと感じたタイミングでした。
音楽=楽しいもの というだけではなく、心や身体を育てるなにかしらの力を持ったものなんだということを感じました。
特別レッスンでの気づき
約7年ほど前、ちょっとしたあるトラブルがキッカケで知り合うことになった赤松林太郎さんというピアニストがいらっしゃいます。
最初はコンクールの審査員をお願いし、その次はコンクールの課題曲説明会をお願いし、そして単発の特別レッスンをお願いし、と仕事の内容もステップアップしていきました。
「赤松先生の特別レッスンを受けると音が変わる」「コンクールで勝てる」
赤松さんの努力の甲斐もあり、そんな口コミが起きるまでになりました。
そこからは全国各地から受講生が訪れるようになりました。赤松先生のレッスンを受けたいからと兵庫県三田市なんていう片田舎まで足を運んでくださるんです。
うちは場を作っただけですが、間接的に店の名前や店のことを知ってもらうことができるというのは大きなメリットでした。
そんな特別レッスンに来る受講生というのは、当然ですが各地のコンクールに果敢にチャレンジしているような人たちばかり。このレッスンで何かを持ち帰ろうと貪欲に臨んでいる姿が見て取れます。
そんなレッスンを見ていて気づいたことがありました。
それは、みんな一様に礼儀正しいということ。レッスン態度がとてもいいということなんです。
もちろん特別レッスンですので普通のレッスンよりも高い授業料をちょうだいしています。一回のレッスンに集中するのは当たり前です。
でも、それ以上に先生に対する敬意の表わし方が素晴らしいなぁと感じたのです。
レッスンが始まる前にはよろしくお願いしますという、レッスン中にはちゃんと返事をする、レッスンが終わったらありがとうございましたという、当たり前だけどなかなかできないことを特別レッスンを受講する子どもたちは普通にできていました。
それは先生に対してだけではなく、間接的に関わる我々に対しても同じように接してくれました。
ピアノのレッスンは長い年月を経ることで、習い事としてポピュラーな存在になっています。そのため、始めるためのハードルがかなり低くなっています。
そのこと自体はいいことかもしれませんが、逆に日常化してしまったことで、習い事として大切にしておきたい部分、たとえば先生への敬意や感謝の気持ちなどが若干おざなりになってしまっているのはまぎれもない事実でした。でも、これは時代の流れなので仕方ないのかなとも思っていました。
しかし、特別レッスンを受講している子たちの姿は昔のそれと一緒でした。
先生への敬意も、気遣いも、感謝の気持ちもそこには存在していました。
どれだけポピュラーになったとしても習い事は芸事です。茶道や華道、踊りなどの芸事と一緒なんじゃないかなと思っています。ピアノ道って言葉があってもいいんじゃないかって思うくらいです。
芸事の世界では、伝え、習う関係において信頼関係は絶対必要です。
ピアノやその他の楽器のレッスンを通じて、昔の人たちが大切にしていた気持ちをもう一度見つめ直して欲しいなと思っています。それによって、あいさつができて、返事ができて、感謝の気持ちを伝えることのできる子どもたちを育てるお手伝いをしていきたいなと思っています。
音楽でこの街の笑顔を増やしたい
当店はいろいろな商売を経験しながらこの街で141年もの長い期間仕事をさせてもらっています。
地域の人たちへの感謝と、歴史をつないでくれた先祖に大変感謝しています。
毎日の仕事の中で、音楽の持つ可能性をまざまざと見せつけられました。
音楽は娯楽などではなく、すべての人たちにとって必要なものなんだと思っています。
そして、ピアノやその他の楽器の習い事を通じて、あいさつができて、返事ができて、感謝の気持ちを伝えることのできる子どもたち=まっすぐな子どもたちを育てるお手伝いをしたいと思っています。
まっすぐな子どもたちが1人でも多く育てば地域はきっと明るくなります。
地域が明るくなれば、おとなも子どももみんな笑顔になれば、それこそがこの地域に対する恩返しなのかなと思っています。
音楽でこの街の笑顔を増やしたい。一朝一夕にはなんともならないことだということも、そしてうちのお店ができることはほんの限られたことだということもわかっています。
しかし、この街で生まれ、この街で仕事をさせてもらっている限り、この街への恩返しの意味も含め、この思いを持って毎日の仕事に取り組んでいきたいと考えています。
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